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📅 2026.08.06 | RYU NAKAZAWA
🌱 視覚障害

視覚障害B2の僕が「探し物ゼロ」にしている定位置ルール5つ|中澤隆の生活ハック

⏱ 約9分で読めます(5,686字)

鍵がない。出かける時間は迫っている。あちこちを手で探って、見つからなくて、だんだん心臓がドキドキしてくる。やっと見つけた頃には、家を出る前なのに、もう気持ちが疲れ切っている——昔の僕は、毎朝これでした。

もしあなたが、毎朝のように「あれ、どこに置いたっけ?」と家の中を歩き回っているなら——。

もしあなたが、探し物のせいで一日のはじまりからどっと疲れてしまうことがあるなら——。

もしあなたが、「もっと頭をよくしたい」じゃなくて「もう探し物で消耗したくない」と思っているなら——。

この記事は、あなたのためのものです。

こんにちは。視覚障害B2クラスのパラトライアスリート・中澤 隆(なかざわ りゅう)です。盲導犬シュクレと一緒に、IRONMAN(226km)のサブ11時間挑戦を続けています。講演家として、年に50回前後、学校や企業で「見えない世界の生活術」や「気合いより段取り」をお話ししています。

今日お伝えするのは、僕が家の中で「探し物ゼロ」を成り立たせている、5つの定位置ルールです。これは机上の理屈ではなく、見えない僕が毎日の暮らしの中で何年もかけて磨いてきた一次情報です。そしてうれしいことに、このルールは目が見える方の暮らしにもそのまま効きます。最後まで読んでもらえたら、今日この瞬間から、あなたの家の探し物も少しずつ減っていくはずです。

📖 この記事の目次
  1. なぜ僕にとって「探し物」が最強の敵なのか
  2. ルール①:1つの物に、1つの場所
  3. ルール②:使う場所のすぐ近くに置く
  4. ルール③:手触りで識別できる工夫
  5. ルール④:定位置を、家族と共有する
  6. ルール⑤:月1回の「定位置チェック」
  7. これは、目が見える方の暮らしにも効きます
  8. あなたへ:まず、1つだけ決めてみてください

なぜ僕にとって「探し物」が最強の敵なのか

まず、これを正直に書かせてください。視覚障害B2の僕にとって、探し物は一日のエネルギーを削る最強の敵です。

目が見える方なら、物がどこかに紛れても、部屋をぐるっと見渡せば「あ、あそこにあった」で終わります。数秒の話です。でも、見えない僕にはその「見渡す」ができません。手で、記憶で、ひとつずつ確かめていくしかない。だから、ひとつの物を見つけ出すのに、健常者の方の何倍もの時間とエネルギーがかかります。

正直に振り返ると、昔の僕は、これでずいぶん消耗していました。鍵がない。出かける時間は迫っている。あちこちを手で探って、見つからなくて、だんだん心臓がドキドキしてくる。やっと見つけた頃には、家を出る前なのに、もう気持ちが疲れ切っている。一日のはじまりの、いちばん大事なエネルギーを、探し物に食われていたんです。

これは僕にとって、ただ「不便だな」では済みませんでした。午前中に練習を入れている日、講演に向かう日、原稿を仕上げたい日。そのスタートでエネルギーを削られると、その日一日のすべてに響きます。アスリートにとっても講演家にとっても、朝のエネルギーは何より貴重です。

だから僕は、ある時はっきり決めました。探し物に使うエネルギーを、ゼロに近づける。気合いで早く見つけようとするんじゃなくて、そもそも探さなくていい仕組みをつくる。これは、僕がずっと大切にしている「気合いより段取り」という考え方そのものです。ここから紹介する5つのルールは、その段取りの中身です。

探し物は、見えない僕にとって最強の敵。だから「早く探す力」じゃなく「探さなくていい仕組み」をつくる。

ルール①:1つの物に、1つの場所

5つのルールの土台になる大原則が、これです。すべての物に、定位置を「1つだけ」決める

鍵は玄関の決まったフックに。白杖は玄関のドアの内側に。ハサミは決まった引き出しの、決まった位置に。こうやって「この物は、ここ」と1か所だけに決めてしまえば、僕はもう迷いません。手を伸ばす場所が、いつも同じだからです。

逆に、いちばんダメなのが「とりあえずここ」です。今日はテーブルの上、明日は棚の手前、その次はカバンの中。置く場所が日によって動くと、見えない僕は毎回ゼロから探すことになります。目が見える方にとっての「とりあえず置き」は、見えない僕にとっては「行方不明にする」のとほぼ同じ意味なんです。

だからこのルールでは、物の数だけ場所を決める、という考え方を徹底します。鍵には鍵の場所、白杖には白杖の場所、財布には財布の場所。「だいたいこのへん」ではなく「ここ」と一点に決める。決めたら、それ以外の場所には置かない。これだけで、探し物の大半は消えていきます。

ここで大事なのは、完璧な収納術を目指さないことです。おしゃれに片付けることが目的ではありません。「自分が手を伸ばしたとき、迷わずそこにある」。それだけを基準に、1物1場所を決めていけば十分です。


ルール②:使う場所のすぐ近くに置く

定位置を決めるとき、僕にはもうひとつ守っているコツがあります。それは、その物を使う場所の、すぐ近くに定位置をつくるということです。

鍵は、玄関を出るときに使います。だから定位置は玄関。ハサミは台所で使います。だから定位置は台所。充電ケーブルは寝るときに使います。だから定位置は寝室の手の届くところ。「使う場所」と「しまう場所」を、できるだけ重ねてしまうわけです。

なぜこれが効くのか。理由はシンプルで、使う場所から遠い定位置は、必ず崩れるからです。台所で使う物の定位置をわざわざ別の部屋に決めてしまうと、人間はどうしても「面倒だから、いったんここに置いておこう」とやってしまいます。その「いったん」が、定位置を壊します。

でも、使う場所のすぐ近くに定位置があれば、使い終わったあと、ほとんど動かずにそこへ戻せます。戻すのに手間がかからないから、自然と戻る。「片付ける」という特別な作業をしなくても、使い終わったら、もうそこが定位置。これが、探し物ゼロを長く続けるためのいちばんのコツです。

僕はよく、これを「片付けないための仕組み」と呼んでいます。気合いで毎回きちんと片付ける、ではなく、片付けなくてもいいくらい近くに最初から置いておく。段取りで、片付けという仕事そのものを減らしてしまうわけです。

探し物ゼロのコツは、がんばって「片付ける」ことじゃない。最初から、戻す場所に置いておくこと。

ルール③:手触りで識別できる工夫

ここからは、見えない僕ならではの工夫が入ってきます。それが「手触りで物を見分ける」という発想です。

目が見えれば、見た目で一瞬に区別できるものでも、僕は見た目に頼れません。だから僕は、指で触れば違いがわかるように、あらかじめ仕込んでおくようにしています。具体的には、こんな工夫です。

🔑 手で見分けるための仕込み

この工夫の根っこにあるのは、見えない僕の指は、みなさんが思っているよりずっと敏感だという事実です。ほんの小さなシールひとつ、ボトルの形のわずかな違い。目が見える方には「そんな小さな差で?」と思えるようなものでも、僕の指はちゃんと拾います。

大事なのは、「見て確かめる」を「触って確かめる」に置き換えてあげること。物の側を、ほんの少し手で見分けやすくしてあげるだけで、僕はその物を探さずに、迷わず選び取れるようになります。これも立派な探し物ゼロの仕組みです。

そしてこの発想は、見えない人だけのものではありません。あとで触れますが、夜の暗い部屋や、急いでいて目で見ている余裕がないとき、手触りの目印は誰にとっても助けになります。


ルール④:定位置を、家族と共有する

もしあなたが一人暮らしでなく、家族やパートナーと暮らしているなら——このルールはとても大事になります。決めた定位置を、必ず家族と共有することです。

これは、僕が身をもって学んだことです。家族は、よかれと思って物の場所を動かしてくれることがあります。「ここに置いてあったから、片付けておいたよ」。気づかいとしては、本当にありがたい。でも、見えない僕にとっては、定位置から物が消えるというのは、それだけで小さな迷子事件になってしまうんです。

だから我が家では、妻と何度も話し合って、家じゅうの定位置を二人の共通ルールにしました。鍵はここ、白杖はここ、よく使う日用品はここ。僕だけが知っているルールではなく、二人で決めて、二人で守るルールにする。こうしておくと、妻が触れた物も、ちゃんと元の場所に戻ります。僕は、家の中を安心して動けるようになります。

ここで僕が伝えたいのは、これは「家族にわがままを通す」話ではない、ということです。定位置の共有は、見えない僕が、家の中で自分の力で動ける範囲を最大にしてくれる。そして、家族にとっても「どこに戻せばいいか」が明確になるぶん、かえって楽になります。お互いのための仕組みなんです。

誰かと暮らしの空間を共有するというのは、お互いの「当たり前」をすり合わせていくことだと、僕は思っています。定位置の共有は、その小さな、でも大切な一歩です。支えてもらうために、まず自分の側の段取りを共有する。これが、繋がりの中で暮らすということだと感じています。


ルール⑤:月1回の「定位置チェック」

ここまでで定位置は決まりました。でも、ここで終わりではありません。最後のルールは、決めた定位置を「維持する」ための仕組みです。

正直に言うと、定位置は、暮らしが少し変わるだけで簡単に崩れます。新しい物が増えた。生活のリズムが変わった。忙しい日が続いた。そういう小さな変化の積み重ねで、いつのまにか「あれ、最近この場所が定まってないな」という物が出てきます。

そこで僕は、月に1回、「定位置チェック」の時間をつくっています。やることはシンプルで、家の中の大事な物が、ちゃんと決めた場所にあるかを、ひとつずつ確かめて、ずれていたら戻すだけです。

🔑 月1回チェックしていること

かかる時間は、10分ほどです。たった10分。でも、この10分をやるかやらないかで、翌月ひと月分の暮らしのストレスが、まるで変わってきます。崩れかけた定位置を、大きく崩れる前に、月に1度そっと戻してあげる。これだけで、探し物ゼロの状態が長く続きます。

僕は、ここにいちばん大事な真実があると思っています。それは、定位置は「決めること」より「維持すること」のほうが、何倍も難しいということです。決めるのは一日でできる。でも、続けるには小さな点検がいる。だからこそ、気合いではなく、月1回という段取りに落とし込んでおくんです。

定位置は、決めることより「維持する」ことの方が、ずっと難しい。だから月に1度、10分だけ戻してあげる。

これは、目が見える方の暮らしにも効きます

ここまで「視覚障害B2の僕の生活術」として書いてきましたが、ここで声を大にして伝えたいことがあります。この5つのルールは、目が見える方の暮らしにも、そっくりそのまま効きます

思い当たることはありませんか。いつも鍵を探している。リモコンがどこかへ消える。ハサミや爪切りが、使いたいときに限って見つからない。家の中で「あれどこ?」と探す時間は、目が見える人の暮らしの中にも、意外なほどたくさん潜んでいます。

そして、その探し物が削っているのは、あなたの時間だけではありません。探すたびに、ほんの少しずつ、あなたの心のエネルギーも削られています。出かける前のイライラ、見つからない焦り。あれが積み重なると、一日のごきげんまで変わってきます。僕がエネルギーを削られていたのと、根っこは同じです。

なぜ僕の仕組みが、見える人にも効くのか。理由はシンプルです。この5つのルールは、もともと「見る力に頼らずに物にたどり着くための仕組み」だからです。見る力に頼らなくても物が見つかる仕組みは、見る力がある人にとっては、さらに楽に効きます。手触りの目印だって、暗い部屋や急いでいるときには、目が見える方の助けになります。

見えない僕が暮らしの中で磨いてきた工夫が、目が見える方の毎日を少し楽にする。これは僕にとって、本当にうれしいことです。不便から生まれた工夫が、誰かの役に立つ。そう思えるから、僕はこうして発信を続けています。


あなたへ:まず、1つだけ決めてみてください

最後に、あなたに伝えたいことがあります。

ここまで5つのルールを紹介してきましたが、いきなり全部やろうとしなくて大丈夫です。むしろ、全部を一度にやろうとすると、たいてい続きません。これは、見えない僕がたくさんの工夫を試してきた中で、心から実感していることです。

だから、お願いはひとつだけ。あなたがいちばんよく探している物を、ひとつだけ思い浮かべて、その定位置を、今日ひとつだけ決めてみてください。鍵でもいい。リモコンでもいい。あなたが「これ、いつも探してるな」という物を、ひとつだけ。

定位置をひとつ決めて、そこに戻すようにする。たったそれだけで、明日のあなたは、その物を探さずに済みます。探さずに済んだぶんの時間とエネルギーは、あなたの大事な何かに回せます。これが、僕がいつも言っている「1ミリの行動」です。大きく変えようとしなくていい。小さな段取りを、ひとつ。そこから、暮らしは静かに変わっていきます。

見えない僕でも、探し物ゼロに近づけました。だからきっと、あなたにもできます。そして、もしあなたが家族と暮らしているなら、その定位置を、ぜひ一緒に暮らす人にも伝えてみてください。支え合いながら整えていく暮らしは、それ自体が、毎日を少しあたたかくしてくれます。

全部いっぺんに変えなくていい。まず1つだけ、定位置を決める。その1ミリの行動から、探し物ゼロははじまります。

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「視覚障害B2の生活」「IRONMAN サブ11挑戦」「1ミリの行動」「気合いより1ミリ」をテーマに、講演を続けています。学校・企業・自治体問わず、対応可能です。盲導犬シュクレも一緒に伺うことができます。

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最後まで読んでくれて、ありがとうございます

中澤の挑戦を、これからも見届けてもらえたら嬉しいです。日々の練習やレース、盲導犬シュクレとの暮らしを発信しています。

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RYU NAKAZAWA | 視覚障害B2 パラトライアスリート・プロ講演家
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