「めちゃくちゃ軽いですよ!」——そう勧められて買った一足で、走り始めて10分、足元がふわふわと不安定になって、僕は恐怖を覚えました。軽さより安定感。あの日、体で思い知りました。
もしあなたが視覚障害者ランナー、あるいは視覚に不安を感じながら走り続けている挑戦者なら。
「シューズって、見た目じゃなくて足裏で選ぶものだ」
これが僕の結論です。
僕は中澤隆。視覚障害B2クラスのパラトライアスリートで、IRONMANに挑戦しています。31歳の時、緑内障で右目は5円玉の穴から覗いてる感じ、左目は目の前でグーチョキパーがわかる程度に。それでも226kmのIRONMANを完走し、2017年から講演を続け、ここ3〜4年は年間50回前後活動をしています。
この記事では、視覚障害者がランニングシューズを選ぶときの具体的な基準と、僕が実際に使ってきた中で感じた「足裏の声」の聞き方をお伝えします。
店頭に並ぶシューズを見比べることができません。色、デザイン、ブランドロゴ。視力のある人が無意識に使っている情報が、僕たちには届かない。
だから僕は、店員さんに「このシューズの特徴を言葉で教えてください」と最初に伝えるようにしています。
視覚情報がない分、足裏の感覚、足首の安定感、歩いたときの接地感に全神経を集中させます。
試し履きは最低5分。店内を何度も歩き、少し走る動きもします。
レビューサイトには「軽量でスタイリッシュ」「カラーが豊富」といった視覚情報ばかり。僕たちが本当に知りたいのは、接地感、クッション性、安定性、耐久性です。
僕が実際にシューズを選ぶとき、以下の5つを必ずチェックしています。
地面との距離感が分かるかが最重要です。
視覚障害者は路面の凹凸を目で確認できないため、足裏が「今、どこを踏んでいるか」を教えてくれるシューズが必要です。
僕の場合、ミッドソールの厚さが25〜30mm程度のシューズが一番安心して走れます。
ランニング中、特に疲労が溜まってくると足元がブレやすくなります。
視覚障害者は視覚でバランスを取れないため、シューズ自体にある程度の安定性が必要です。
試し履きで確認するポイント:
「軽量シューズ=速い」と思われがちですが、視覚障害者には必ずしも当てはまりません。
ある程度の重さがあるほうが、接地時の安定感と情報量が増えるからです。
僕が快適に走れる重さは片足280〜320g前後。これより軽いと足元が不安定に感じます。
視覚障害者は路面を目で確認できないため、無意識に同じ場所をすり減らしやすい傾向があります。
これらをチェックし、500km以上履けるシューズを選ぶようにしています。
かかとが浮く、横幅がきつい、つま先が当たる。
こうした違和感は視覚障害者にとって転倒リスクに直結します。
試し履き時に必ず確認:
あるとき、店員さんに「このシューズ、めちゃくちゃ軽いですよ!」と勧められて購入しました。
結果、走り始めて10分で足元が不安定に感じ、恐怖を覚えた。軽さより安定感が大事だと痛感しました。
「クッション性抜群」というレビューを信じてネット購入。
届いたシューズは確かにクッション性はあったけれど、接地感が鈍すぎて地面との対話ができなかった。
それ以来、必ず試し履きしてから買うと決めています。
あるスポーツ用品店で「視覚障害があるので、接地感と安定性を重視したいです」と正直に伝えました。
店員さんは驚きながらも、僕の足を測定し、走り方を観察し、3足を厳選して持ってきてくれた。
そのうちの1足が、今も愛用しているシューズです。
ネットは便利ですが、視覚障害者こそ実店舗で試し履きすべきです。
おすすめの行動:
来店前に電話で「視覚障害があるので、シューズ選びを手伝ってほしい」と伝える
平日の空いている時間帯に行く
最低30分は時間を確保する
視覚障害の程度(「ほぼ見えません」「ぼんやり見えます」など)
走る距離・頻度(「週3回、1回10km」など具体的に)
過去の怪我や痛み(「右膝が痛くなりやすい」など)
これを伝えるだけで、店員さんの提案精度が格段に上がります。
僕が店頭で必ず行う確認項目です。
これらを全てクリアしたシューズだけを購入します。
シューズ選びと同じくらい大事なのが、走る環境と準備です。
僕は少し見えるので、家の近くの公園を走ります。路面が整備されていて、人通りが少ない時間帯を選んでいます。
ガイドトライアスリートと一緒に走るときは、伴走ロープ(テザー)で繋がります。僕は右手にロープを持ち、ガイドさんは左手に持って横並びで走ります。
雨の日や視界が悪い日は、ジムのトレッドミルでインターバル練習をします。
速度と傾斜を固定できるので、安定した環境で走力を鍛えられるのがメリットです。
視覚障害者がランニングシューズを選ぶときのポイントをもう一度まとめます。
接地感が明確(ミッドソール25〜30mm程度)
着地時の安定感(かかと部分の硬さ、横ブレの少なさ)
重さは片足280〜320g前後(軽すぎない)
耐久性(500km以上履ける)
フィット感(かかとが浮かない、遊びがない)
そして何より、実店舗で試し履きし、店員さんに正直に伝えること。
「見えないから選べない」ではなく、「見えないからこそ、足裏が教えてくれる」。
僕はそう信じて、今日も走り続けています。
視覚障害があっても、ランニングは続けられます。トライアスロンも、IRONMANも。
僕は2024年のIRONMANみなみ北海道を13:14:17で完走し、2025年は15:08:45で完走しました。視覚障害者ギネス記録「11時間03分」を超えることを目標に、人生現役を誓っています。
もっと具体的な練習法やメンタル管理については、note有料記事で公開予定です。また、レースの裏側や日常の工夫はYouTubeでもシェアしていきます。
一歩ずつ、前へ。
中澤隆 プロフィール
視覚障害B2クラス パラトライアスリート / 講演家 / 盲導犬シュクレと暮らす
IRONMAN挑戦中 / ここ3〜4年は年間50回以上のペース / あん摩マッサージ指圧師
公式HP: https://ryunakazawa.netlify.app
ブログ一覧: https://ryunakazawa.netlify.app/blog/
2026年9月13日、IRONMANジャパンみなみ北海道(225.8km)に挑みます。この挑戦は、支えてくれる人たちと一緒に作る物語です。日々の練習やレースの様子を発信しているので、そばで見届けてもらえたら嬉しいです。
中澤の挑戦を、これからも見届けてもらえたら嬉しいです。日々の練習やレース、盲導犬シュクレとの暮らしを発信しています。
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