「毎朝4時半に起きています」と言うと、決まって「すごい意志ですね」「根性ありますね」と返されます。でも、これははっきり否定させてください。僕は意志の弱いほうで、根性で起きているわけではありません。秘密は、前の晩の「夜の仕込み」にあります。
もしあなたが、早起きしようと何度も決意して、そのたびに挫折してきたなら——。
もしあなたが、「自分は意志が弱いから続かないんだ」と、自分を責めているなら——。
もしあなたが、朝の時間を味方につけたいのに、どうしても布団から出られないなら——。
この記事は、あなたのためのものです。
こんにちは。視覚障害B2クラスのパラトライアスリート・中澤 隆(なかざわ りゅう)です。相棒は盲導犬のシュクレ。僕は毎朝4時半から6時のあいだに起きて一日を始めながら、IRONMAN(226km)のサブ11時間挑戦を続け、年に50回ほど講演でお話をしています。
今日は、僕がどうやって朝4時半起きを続けているかという話をします。先に言っておきますが、僕はまったく根性のある人間ではありません。むしろ意志は弱いほうです。それでも続いているのには、ちゃんと理由があります。答えは「気合い」ではなく、前夜の段取りにあるんです。意志が弱くても、ちゃんと続く。そのための工夫を、今日は包み隠さずお話しします。
「毎朝4時半に起きています」と言うと、よく「すごい意志ですね」「根性ありますね」と言われます。
でも、これははっきり否定させてください。僕は、根性で起きているわけではありません。
もし朝の起床を、毎回その瞬間の気合いに頼っていたら、僕はとっくに挫折していたと思います。眠い朝に「よし、気合いで起きるぞ」と自分を奮い立たせるのは、いちばん長続きしないやり方だからです。
僕がやっているのは、朝の自分を、前の晩のうちに助けておくこと。つまり、起きるための準備を、夜のうちに全部すませておくんです。朝の自分には、なるべく「考えること」「判断すること」を残さない。これが、根性ゼロで早起きを続けるコツです。
考えてみれば、根性というのは、とても不安定なものです。気力が満ちている日は出せても、疲れている日や、心が沈んでいる日には、出てきてくれません。
その日その日の根性に、毎朝の起床を預けてしまったら、続くわけがないんです。だから僕は、根性という不確かなものではなく、仕組みという、いつでも同じように働いてくれるものに、早起きを任せることにしました。気分の波があっても、仕組みは裏切りません。
朝起きたばかりの自分は、一日でいちばん意志が弱い状態です。その弱い自分に、あれこれ判断や準備をさせるのは無理がある。
だから僕は、頭の冴えている夜の自分に、明日の朝の段取りを全部やらせておきます。朝の自分は、ただ用意されたレールに乗るだけ。これが続く秘訣です。
1つ目の仕込みは、明日やることを、声で残しておくことです。
僕は目が見えにくいので、手書きのメモは書けません。そのかわり、iPhoneに話しかけて、音声でメモを残します。「明日の朝は、まず○○をやる」と、寝る前に声で吹き込んでおくんです。
これをやると、朝起きたときに「今日、何からやるんだっけ?」と迷う時間がゼロになります。迷いがないと、行動までが早い。
布団の中で「どうしようかな」と考えはじめると、そのまま二度寝に吸い込まれていく。でも、やることが最初から決まっていれば、体は自然に動き出します。
じつは僕は、何かを「決める」のが、あまり得意なほうではありません。迷い出すと、ずるずると考え込んでしまう。
だからこそ、判断は、頭の冴えている前の晩にすませておきたいんです。眠くて、頭がぼんやりしている朝に、「さあ、今日は何をしよう」とゼロから決めようとすると、たいてい、いちばん楽なほう——つまり二度寝——を選んでしまう。人間は、そういうふうにできています。だから、朝の自分には、決断を一切させない。これが、僕なりの工夫です。
大事なのは、欲張らないことです。明日やることを10個も20個も並べると、朝の弱い自分は、それだけで気が重くなってしまう。だから僕は、翌日の行動を、声でシンプルに残します。見えなくても、声なら残せる。これは僕にとって、とても相性のいいやり方でした。
2つ目の仕込みは、使う道具を、前の晩のうちにそろえておくことです。
たとえば、朝にスイムやランの練習がある日。ウェアや道具を、起きてから探していたら、それだけで時間がかかります。見えにくい僕にとって、朝の薄暗い中で「あれはどこだっけ」と探すのは、とても効率が悪く、気持ちもくじけやすい。
だから僕は、寝る前に、明日使うものを決まった場所に、決まった順番でそろえておきます。手を伸ばせば、そこにある。探さなくていい。この「探さなくていい」という状態が、朝の自分にとって、どれだけありがたいか。
見えるかたには、なんでもないことに思えるかもしれません。でも、見えにくい僕にとって、「物が、いつもの場所にある」というのは、暮らしの根っこを支える大切なルールです。置き場所が毎回バラバラだと、僕は何ひとつ、すぐには見つけられません。
だから、ふだんから、物の住所を決めておく。そして、明日使うものは、前の晩に、その住所からさっと取り出せる場所へ移しておく。この小さな習慣が、朝のバタバタを、まるごと消してくれるんです。
見えにくい僕にとって、「探す」というのは、いちばん消耗する作業です。朝いちばんで探し物に手こずると、それだけでやる気がそがれてしまう。
だから、探す作業を、前の晩に消しておく。道具を手の届く所にそろえておくだけで、朝のハードルは何段も下がります。
3つ目の仕込みは、明日の予定を、先に決めておくことです。
「明日は何時に、誰と、何をするか」。
これを前の晩のうちにはっきりさせておくと、朝起きる理由が、ぼんやりした「早起きしたい」から、具体的な「○時に、あれをやるから起きる」に変わります。
とくに僕の場合、練習はガイドと一緒です。相手の時間をいただいて、一緒に進む。だから「○時にガイドと待ち合わせ」という予定があると、それはもう、自分ひとりの都合では動かせない、確かな約束になります。その約束が、朝の僕を布団から引っ張り出してくれるんです。
予定が決まっていない朝は、起きる理由が弱い。予定が決まっている朝は、起きる理由が強い。
たったそれだけの違いが、続くか続かないかを大きく分けます。
3つの仕込みをやってきて、僕がたどり着いた答えは、これです。
人は、予定があるから起きられる。
「早起きしよう」という決意だけでは、人はなかなか起きられません。なぜなら、決意は気持ちであって、約束ではないからです。気持ちは、眠気の前ではあっけなく負けます。
でも、「○時に、これをやる」という具体的な予定があると、話は別です。そこには、向かう先がある。待っている人がいる。やることが決まっている。
だから体が動く。気合いを入れる必要すらありません。
とくに、僕の朝を支えてくれているのは、「待っている人がいる」という感覚です。ガイドが、決めた時間に、決めた場所で待ってくれている。
その人を、ひとりで待たせるわけにはいかない。そう思うと、どんなに眠くても、体が動きます。一人だけの約束なら、つい甘えてしまう僕も、誰かとの約束なら、ちゃんと守れる。人に支えられているからこそ、起きられる。僕の早起きは、自分ひとりの力で成り立っているわけではないんです。
やる気が出るのを待っていたら、朝はいつまでも来ません。やる気は、起きて動き出した後からついてくるもの。
だから僕は、やる気を待たずに、前の晩に作った段取りに乗っかります。予定という線路の上を、ただ進むだけ。そうしているうちに、自然とやる気は追いついてきます。
この「夜の仕込み」を続けていて、僕が好きになった考え方があります。
それは、夜の仕込みは、朝の自分への手紙だ、という捉え方です。
夜の僕は、一日を終えて、頭がいちばん落ち着いている時間にいます。その僕が、まだ眠っている明日の朝の僕に向けて、「明日はこれをやればいいよ」「道具はここに置いておいたよ」「○時に約束があるよ」と、そっと用意をしておく。
朝の僕は、その手紙を受け取って、書いてあるとおりに動くだけ。まるで、優しい誰かが、先回りして準備してくれていたみたいに、すっと一日が始まります。
見えにくい僕にとって、朝いちばんは、いちばん心細い時間でもあります。薄暗くて、頭もまだ働いていなくて、そこで「さあ、どうしよう」と一から考えるのは、本当にしんどい。
でも、夜の自分が手紙を残してくれていれば、朝の僕は、一人ぼっちで考え込まなくていい。前の晩の自分が、ちゃんと味方になってくれているからです。
頑張るというと、つい「いまの自分が、歯を食いしばること」だと考えてしまいがちです。
でも、本当に効くのは、調子のいい時の自分が、しんどい時の自分を、先回りで助けておくこと。夜の自分が、朝の自分を助ける。これは、自分で自分のチームメイトになる、ということなんです。
だから僕は、夜の仕込みを「面倒なひと手間」だとは思っていません。明日の自分への、ちょっとした思いやり。そう思うと、寝る前のほんの数分が、少しあたたかい時間に変わります。
「気合いより段取り」。これは、僕が大切にしている合言葉のひとつです。
朝4時半起きも、つきつめれば、ただこれだけのことなんです。
明日のタスクを声で残す。道具を手の届く所にそろえる。予定を先に決めておく。
この3つを前の晩にやっておくだけで、朝の僕は、根性を使わずに起きられます。起きられた日が積み重なっていく。それが、僕の朝の習慣の正体です。
そして、ここで僕がもうひとつ大事にしているのが、行動ベースという考え方です。「何時間眠れたか」「すっきり起きられたか」という結果で自分を採点すると、うまくいかない朝に落ち込んで、続かなくなってしまう。
そうではなく、「前の晩の仕込みを、ちゃんとやれたか」という行動で見る。仕込みさえやれていれば、その日は合格。これなら、気持ちが折れずに続けられます。
たまには、仕込みをしたのに、どうしても起きられない朝もあります。体が重い日、心が沈んでいる日。そういう朝は、無理に責めません。
でも、不思議なもので、仕込みさえしてあれば、起きられなかった次の日には、また自然とレールに戻れるんです。大事なのは、一日も外さないことではなく、外しても戻れる仕組みを、自分の手元に持っておくこと。その仕組みが「夜の仕込み」なんです。
早起きは、根性じゃなくて段取り。朝の自分を、前の晩の自分が助けておく。
もしあなたが、早起きに何度も挫折して、自分を責めているなら。
どうか、自分の意志を疑うのは、もうやめてください。足りなかったのは意志じゃなくて、前の晩の段取りかもしれません。
今夜、寝る前に3つだけ試してみてください。明日やることを、ひとことメモに残す。明日使うものを、手の届く所に置く。明日の予定を、ひとつ決めておく。
たったこれだけで、明日の朝のハードルは、ぐっと下がります。
僕は今日も、誰かに支えられ、誰かと約束をして、その約束のおかげで、朝の4時半に布団から起き上がっています。
起きる理由を、前の晩に作っておく。それだけで、朝は少しずつ、あなたの味方になっていきます。
気合いはいりません。いるのは、ほんの少しの工夫だけ。
今夜から、一緒に仕込みを始めてみませんか。
「視覚障害B2の生活」「IRONMAN サブ11挑戦」「1ミリの行動」「気合いより1ミリ」をテーマに、講演を続けています。学校・企業・自治体問わず、対応可能です。盲導犬シュクレも一緒に伺うことができます。
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RYU NAKAZAWA | 視覚障害B2 パラトライアスリート・プロ講演家
盲導犬シュクレと共に、1ミリの行動を続ける人