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📅 2026.09.23 | RYU NAKAZAWA
📖 物語・哲学

妻の話|毎朝の服選びと、そばで支えてくれる人

⏱ 約8分で読めます(4,937字)

朝、目が覚めて僕がまず向き合うのは「今日、何を着るか」。色がはっきり分からない僕のその毎朝の服を、妻が選んでくれます。見えない僕の一日が、どれだけこの人の支えの上にあるのか——今日はそんな、ふつうの毎日の話です。

もしあなたが、毎日のそばにいる人の存在を、「当たり前になりすぎて、ちゃんと感謝できているかな」と、ふと思ったことがあるなら——。

もしあなたが、誰かと一緒に暮らしていて、「支え合うって、具体的にどういうことだろう」と考えたことがあるなら——。

もしあなたが、大切な人との関係を、もっと温かいものにしたいと願っているなら——。

この記事は、あなたのためのものです。

こんにちは。視覚障害B2クラスのパラトライアスリート・中澤 隆(なかざわ りゅう)です。盲導犬シュクレと暮らしながら、IRONMAN(226km)のサブ11時間に挑み、年間50回前後の講演をしています。

今日は、僕の一番近くで支えてくれている人——のことを書きます。僕たちは、僕が36歳のときに中学の頃の初恋の人と再会して、2020年に結婚しました。その再会と告白の話は別の記事に書いたので、ここでは繰り返しません。今日書きたいのは、結婚してからの、ふつうの毎日のことです。見えない僕の生活が、どれだけ妻の支えの上にあるのか——その話を、まっすぐにお伝えします。

📖 この記事の目次
  1. 僕の一日は、「今日、何を着るか」から始まる
  2. 講演のガイドを、してくれることもある
  3. 同じ景色を、二人で見る
  4. 「支えられる」ことを、受け取れるようになるまで
  5. 僕も、妻にとっての何かでありたい
  6. 後ろ側の人まで、ちゃんと見たい
  7. 一番近くにいる人を、ちゃんと見てください

僕の一日は、「今日、何を着るか」から始まる

朝、目が覚めて、僕がまず向き合うこと。それは「今日、何を着ようか」です。当たり前のことに聞こえるかもしれません。でも、視覚障害B2クラスの僕にとって、服の色を見分けたり、柄を合わせたりするのは、簡単なことではありません。色がはっきり分からないと、上と下がちぐはぐな組み合わせになってしまうこともあります。自分では気づけないからこそ、ここは人の助けが本当にありがたいところなんです。

その僕の毎朝の服を、妻が選んでくれます。これは、僕にとって本当にありがたいことです。今日はどこへ行くのか、誰に会うのか、講演なのか練習なのか。その日に合った服を、妻が考えて、用意してくれる。僕が人前に立つとき、ちゃんとした格好でいられるのは、妻のおかげです。天気や気温に合わせて、暑くないか寒くないかまで気にかけて選んでくれる。その細やかさに、毎朝、助けられています。

👔 毎朝の服選びという支え

見えない僕にとって、服を選ぶことは小さなことじゃない。
その毎朝を、妻が支えてくれている。

「ちゃんとした自分」で人前に立てるのは、妻が整えてくれているからです。

この「服を選んでくれる」という一つのことの中に、僕は妻の支えのすべてが詰まっている気がしています。それは、ただ服を渡す作業ではありません。今日の僕を想像して、僕が安心して一日を過ごせるように整えてくれる、愛情のかたちです。見えない僕の毎日は、こういう小さな支えの積み重ねの上に、成り立っています。

服の色や組み合わせを間違えると、人前に出たときに恥ずかしい思いをすることがあります。見えない僕には、その「間違い」が自分では分かりません。でも、妻が整えてくれるおかげで、僕はそういう不安を抱えずに、堂々と人前に立てます。これは、本当に大きなことなんです。安心して外に出られるということ。ちゃんとした自分でいられるということ。その土台を、妻が毎朝、静かに作ってくれている。声高に「支えているよ」と言うわけではなく、ただ当たり前のように、僕の一日を整えてくれる。その静かな優しさに、僕はいつも救われています。


講演のガイドを、してくれることもある

僕は年間50回前後、全国でお話をさせてもらっています。慣れない会場に行くこともたくさんあります。そんなとき、妻が講演のガイドをしてくれることがあります。

会場までの道のり、控室の場所、ステージへの上がり方、段差や障害物。見えない僕にとって、初めての場所はそれだけで気を張ります。でも、隣に妻がいてくれると、僕は安心して、お話そのものに集中できます。「ここに段差があるよ」「この先、右に曲がるよ」。その一言ひとことが、僕を支えてくれます。慣れない会場で一人だったら、僕はきっと、移動のことばかり気にして、肝心のお話に集中できないでしょう。でも、安心して任せられる人が隣にいると、僕は目の前の聴衆の方々に、心を全部向けることができます。これは、講演の質そのものに関わる、本当に大きな支えです。

人前で堂々と話せるのは、
舞台の裏で、妻が支えてくれているから
僕の言葉は、二人で届けているのかもしれません。

講演で僕がお話しする「ピンチはチャンス」「繋がりの輪の中で」という言葉。その言葉を、僕は自分だけの力で届けているわけではありません。会場まで安心して向かえるように、ステージに立てるように、妻が支えてくれているから、届けられている。僕の挑戦も、僕の仕事も、妻との二人三脚なんです。


同じ景色を、二人で見る

僕には、世界がはっきりとは見えません。だからこそ、僕は「景色」というものを、人の言葉を通して受け取ることが多いんです。妻と一緒に出かけたとき、妻が「きれいだね」と言ってくれる。その一言で、僕の中にも、その景色が広がります。僕が直接は見られないものを、妻が言葉にして、僕に届けてくれる。これは、レースでガイドが景色を伝えてくれるのと、どこか似ています。

見えないことは、確かに不便です。でも、見えないからこそ、僕は人の言葉に耳を澄ますようになりました。妻のひとことの中にある優しさや、その日の空気を、丁寧に感じ取るようになった。見えない世界を、二人で見る。それは、見える人同士では味わえない、僕たち独特の景色の見方かもしれません。不便さの中に、こういう温かさが隠れていることを、僕は妻と暮らして知りました。

👀 見えない景色を、二人で見る

僕が直接は見られないものを、
妻が言葉にして、届けてくれる。

見えないからこそ、人のひとことを、深く受け取れる。それも一つの豊かさだと思います。

ピンチはチャンス、というのは、こういうことでもあります。見えないというピンチの中に、人の言葉を深く味わうという、思いがけないチャンスがある。妻と過ごす毎日は、僕にそのことを、何度も教えてくれます。


「支えられる」ことを、受け取れるようになるまで

正直に言うと、僕は昔、人に支えられることが苦手でした。視覚障害者になって、できないことが増えていったとき、誰かの助けを借りるたびに、情けなさを感じていました。「自分でやらなきゃ」「迷惑をかけたくない」。そう思えば思うほど、心は苦しくなっていきました。

でも、トライアスロンでガイドと走るようになって、そして妻と暮らすようになって、僕は少しずつ変わりました。支えられることは、弱さではない。支え合うことこそが、一緒に生きるということなんだと、分かってきたんです。妻に服を選んでもらうことも、講演のガイドをしてもらうことも、僕が「弱いから」ではありません。二人で一つの毎日を作っているから、なんです。考えてみれば、目が見える人だって、自分だけで全部をこなしているわけではありません。誰もが、誰かに何かを助けてもらいながら生きている。ただ、僕の場合は、それが少し目に見えやすいかたちで現れているだけなんです。そう思えるようになってから、僕は、支えられることを恥じる気持ちが、すっと消えていきました。

🤝 支え合いは、対等なチーム

助けてもらうのは、負けじゃない。
それは、二人で人生を進める対等なチームの形。

僕が妻を支えることもある。妻が僕を支えてくれることもある。それでいいんだと、今は思えます。

「支えられる」ことを素直に受け取れるようになったとき、僕の毎日は、ずっと温かくなりました。情けなさで自分を責める時間が減って、感謝で胸がいっぱいになる時間が増えた。これは、妻が僕に教えてくれた、一番大きなことかもしれません。妻は、僕に服を選んでくれるだけでなく、僕の心の向き方そのものを、少しずつ整えてくれたんです。


僕も、妻にとっての何かでありたい

ここまで、妻に支えてもらっている話ばかり書いてきました。でも、夫婦というのは、一方的に支えてもらうだけの関係では、長続きしないと思っています。妻が僕を支えてくれる分、僕も、妻にとっての何かでありたい。これは、僕がいつも心に置いていることです。

僕にできることは、限られているかもしれません。目が見えにくいぶん、できないことも多い。それでも、僕にしかできない支え方が、きっとあるはずです。妻が落ち込んでいるときに、そばにいること。妻の話を、じっくり聞くこと。僕が挑戦し続ける姿を見せることで、妻に「この人と一緒にいてよかった」と思ってもらえること。完璧ではなくても、僕なりのやり方で、妻を支えていきたいんです。

支えてもらうばかりじゃない。
僕も、妻にとっての支えでありたい
夫婦は、お互いに寄りかかり合う、対等なチームだから。

僕がIRONMANに挑み続けるのも、講演で全国を回るのも、その姿が、妻にとっての誇りや喜びに繋がればいいな、という思いが、どこかにあります。僕が前を向いて生きることが、僕を支えてくれる妻への、一番の恩返しになるかもしれない。そう信じて、僕は今日も、挑み続けています。支え合うというのは、どちらか一方が頑張ることではなく、二人で同じ方向を向くことなんだと、妻と暮らして学びました。


後ろ側の人まで、ちゃんと見たい

僕が大切にしている考え方に、「後ろ側の人まで理解する」というものがあります。妻は、僕を一番近くで支えてくれる人です。でも、その妻にも、妻を支えてくれる人や、妻が大切にしている世界があります。

妻が僕を支えてくれるということは、妻自身の時間や、妻の生活の一部を、僕のために使ってくれているということです。それは、決して当たり前のことではありません。だからこそ僕は、妻が大切にしているものを、僕も大切にしたい。妻の後ろにある世界まで、ちゃんと見たい。それが、一番近くで支えてくれる人への、僕なりの感謝の向け方です。

見えない僕の毎日は、
妻の支えの上にある
だからこそ、その人の世界まで、大切にしたい。

感謝は、言葉にしないと伝わりません。そして、相手の世界まで含めて大切にすることが、本当の感謝だと、僕は思っています。妻に支えられている分、僕も妻を支えたい。妻が困っているときには、僕が力になりたい。完璧にはできないかもしれないけれど、お互いに支え合う気持ちだけは、いつも持っていたい。二人で、繋がりの輪の中で、これからも生きていきたいんです。


一番近くにいる人を、ちゃんと見てください

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。最後に、あなたに伝えたいことがあります。

一番近くにいる人ほど、その存在が「当たり前」になってしまいがちです。毎日そばにいてくれるから、支えてもらっていることに、気づきにくくなる。でも、その当たり前は、決して当たり前ではありません。誰かがあなたの毎日を、見えないところで支えてくれている。それに気づけたとき、人はもっと優しくなれます。

もしあなたのそばに、いつも支えてくれる人がいるなら、今日、その人に「ありがとう」と伝えてみてください。小さなことでいいんです。「いつも助けてくれてありがとう」。その一言が、二人の毎日を、もっと温かくしてくれます。支え合える人がいることは、人生の何よりの宝物です。照れくさくて言えないこともあるかもしれません。でも、感謝は、心の中に置いておくだけでは、相手には届きません。言葉にして初めて、二人のあいだを温めてくれます。僕も、なかなか素直に言えないときがあります。それでも、ふとした瞬間に「ありがとう」と伝えるようにしています。

僕は、見えない毎日を、妻に支えられて生きています。その支えの上で、IRONMANに挑み、全国でお話をしています。これからも、一番近くにいてくれる人への感謝を忘れずに、繋がりの輪の中で、人生を現役で生きていきます。今日も、最後まで読んでくれて、本当にありがとう。


🔥 挑戦の続きを、見届けてください

2026年9月13日、IRONMANジャパンみなみ北海道(225.8km)に挑みます。この挑戦は、支えてくれる人たちと一緒に作る物語です。日々の練習やレースの様子を発信しているので、そばで見届けてもらえたら嬉しいです。

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最後まで読んでくれて、ありがとうございます

中澤の挑戦を、これからも見届けてもらえたら嬉しいです。日々の練習やレース、盲導犬シュクレとの暮らしを発信しています。

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「視覚障害B2の生活」「IRONMAN サブ11挑戦」「1ミリの行動」「気合いより1ミリ」をテーマに、講演を続けています。学校・企業・自治体問わず、対応可能です。盲導犬シュクレも一緒に伺うことができます。

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