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📅 2026.09.08 | RYU NAKAZAWA
💪 挑戦

9月の大きな大会へ|今年の僕の作戦ノート・視覚障害B2のIRONMAN再挑戦

⏱ 約8分で読めます(4,960字)

9月の226kmという頂上に、いきなり飛びつかない。6月のミドル、7月の合宿と、手前に段を置いて、一段ずつ上がっていく。これが、今年の僕の作戦ノートの背骨です。

もしあなたが、大きな目標を前にして、何から手をつければいいか分からなくなることがあるなら——。

もしあなたが、本番までの時間を、どう積み上げていけばいいのか知りたいなら——。

もしあなたが、見えない世界で226kmに再挑戦する人間の「作戦の立て方」を覗いてみたいなら——。

この記事は、あなたのためのものです。

こんにちは。視覚障害B2クラスのパラトライアスリート・中澤 隆(なかざわ りゅう)です。盲導犬シュクレと一緒に暮らしながら、IRONMAN(226km)のサブ11時間挑戦を続けています。年間50回前後、学校や企業で講演にも立たせてもらっています。

今日は、僕が今年挑む9月の大きな大会に向けた「作戦ノート」を、みなさんにそっと開いてお見せします。IRONMAN226kmへの再挑戦。相棒のガイドと、チームで作戦を立てて、本番まで一段ずつ積み上げていく。大きな本番だからこそ、いきなり飛びつくのではなく、手前にいくつもの段を置いて、確実に近づいていく。気合いだけで挑むのではなく、段取りで挑む。そんな今年の僕の設計図を、手紙のようにお届けします。

📖 この記事の目次
  1. 今年の僕の、大きな目標
  2. 相棒のガイド・平川さんと組む
  3. 6月のミドルで、流れを確かめる
  4. 7月の合宿で、チームの呼吸を合わせる
  5. 6月→7月→9月、一段ずつ積み上げる
  6. サブ11への挑戦は、これからも
  7. あなたにも「作戦ノート」を

今年の僕の、大きな目標

今年の9月、僕はもう一度、IRONMANに挑みます。スイム3.8km、バイク180km、ラン42.2km、合わせて226km。視覚障害B2の僕が、ガイドと二人でつなぐ、長い長い一日です。

一度走ったことのある距離でも、毎回ゼロからの挑戦です。体の状態も、コースの条件も、その年その年で違う。去年と同じ準備をしても、今年は通用しないかもしれない。だからこそ、毎年あらためて、作戦を一から立て直します。だから「前にできたから今年も大丈夫」とは思いません。今年の体で、今年のチームで、もう一度ていねいに積み上げる。それが、再挑戦という言葉に込めた僕の気持ちです。

そしてこの再挑戦は、僕一人のものではありません。支えてくれる仲間がいて、応援してくれる人がいて、はじめて挑める。ガイドがいて、家族がいて、応援してくれるみなさんがいる。その全部が、僕を本番へ運んでくれます。繋がる輪の中で、9月の大きな大会へ向かっていきます。

「もう一度挑む」と決めること自体に、僕は意味があると思っています。一度経験したことを、また一からやり直す。それは、楽な道ではありません。でも、過去の自分を超えていくには、もう一度同じ場所に立つしかない。去年の自分、おととしの自分。その自分たちに「今年はここまで来たよ」と報告できるように、僕はまた、長い一日に向かって準備を始めます。振り返るためではなく、超えるために、もう一度挑む。

同じ距離でも、毎回が初挑戦。今年の体で、今年の仲間と、もう一度ていねいに積む。

相棒のガイド・平川さんと組む

今年の大きな大会で、僕とタッグを組んでくれるのが、ガイドの平川さんです。仲間の紹介で出会った相棒。今では、僕にとってなくてはならない存在です。

僕のレースは、ガイドがいてはじめて成り立ちます。スイムは伴走ロープでつながり、バイクはタンデムで二人乗り、ランはロープで横並び。ガイドは、僕のもう一つの目です。コースの様子、路面の変化、補給のタイミング。見えない僕の代わりに、平川さんが世界を言葉にして渡してくれます。

大事なのは、この信頼は一日では育たないということ。一緒に練習を重ね、合図をすり合わせ、お互いの呼吸を覚えていく。その積み重ねがあって、本番でロープ一本を信じて走れる。支えられて挑むとは、こういう関係を時間をかけて作っていくことだと、僕は思っています。

ロープ一本でつながって走る。これは、言葉にすると簡単ですが、実際にやってみると、ものすごい信頼が必要です。見えない僕は、ガイドが「右」と言えば右に、「止まる」と言えば止まる。その一言を、疑わずに体で受け取る。もし信頼が足りなければ、合図に体が反応しきれません。だから、本番までの時間をかけて、二人で信頼を編んでいく。仲間の紹介で出会った平川さんと、僕はそうやって、少しずつ「二人で一人」のような関係を作ってきました。

🔑 作戦は、一人で立てない

見えない僕にとって、作戦を立てるとは、ガイドと一緒に設計図を描くこと。コースのどこで何に気をつけるか、補給はどう合図するか。二人で決めた作戦だから、本番で迷いがなくなります。チームで挑むから、遠い目標にも手が届く。


6月のミドルで、流れを確かめる

9月の本番にいきなり挑むのではなく、僕はその前に段階を踏みます。最初の一段が、6月のミドルディスタンスのレースです。

ミドルは、本番のIRONMANより短い距離のトライアスロン。いわば、本番に向けた大事な「中間テスト」です。ここで、スイム・バイク・ランの流れを通しで確かめる。ガイドとの合図はそろっているか、補給は時間どおりに入れられるか、トランジション(種目の切り替え)はスムーズか。本番でやることを、短い距離で一度リハーサルしておきます。

頭の中で「たぶん大丈夫」と思っていることと、実際に体を動かして「大丈夫だった」と確かめることの間には、大きな差があります。ミドルは、その差を埋める場です。机の上の作戦を、体で試して、本物の作戦に変える。「できるはず」を「できた」に変える。この一段があるから、9月の本番に、自信を持って臨めるんです。

ミドルでうまくいったこと、うまくいかなかったこと。その両方が、9月へ向けた作戦ノートの貴重な書き込みになります。本番でいきなり試さない。先に小さく試して、直しておく。これも、気合いより段取りという僕の考え方の表れです。

特に、うまくいかなかったことのほうが、僕には大切です。本番の前に失敗を見つけられたら、それはむしろラッキー。本番で起きてからでは直せないことを、ミドルのうちに見つけて、直しておける。「ここで補給が遅れた」「この合図、伝わりにくかった」。そうした小さなつまずきを、9月までの宿題として持ち帰る。失敗は、本番までに見つけておくほど、価値が上がる。ミドルは、そのための大切な場です。


7月の合宿で、チームの呼吸を合わせる

ミドルの次の一段が、7月の合宿です。

合宿は、まとまった時間をかけて、本番に近い形で練習を積む場です。長い距離を実際に動いてみて、体に本番の感覚を覚え込ませる。そして何より、ガイドとチームの呼吸を合わせる大切な時間です。

ロープを引く合図、止まる合図、補給を渡すタイミング、声のかけ方。こうした一つひとつを、合宿でとことんすり合わせます。本番でとっさに「どうする?」と相談する余裕はありません。だから、合宿のうちに、言葉にしなくても伝わるくらいまで、二人の合図をそろえておく。

合宿で見えてきた課題は、本番までにまだ直せます。「ここはもう少しこうしよう」「この合図、もっとシンプルにしよう」。チームで気づいて、チームで直す。合宿は、本番のための最後の調整であり、信頼を深める場でもあります。

それに、合宿には、技術以外の大切な意味もあります。長い時間を一緒に過ごすことで、僕とガイドの間に、言葉にならない安心感が育つ。一緒に練習して、一緒にご飯を食べて、一緒に疲れる。そうやって過ごした時間そのものが、本番の苦しい場面で効いてきます。「この人となら、最後まで行ける」。その確信は、合宿のような濃い時間からしか生まれません。本番で信じ合うために、合宿で一緒に過ごす。チームづくりとは、結局、一緒にいた時間の長さなのかもしれません。

本番で初めてやることを、一つでも減らす。そのために、ミドルがあり、合宿がある。

6月→7月→9月、一段ずつ積み上げる

こうして並べてみると、今年の僕の作戦は、6月のミドル → 7月の合宿 → 9月の本番という、一段ずつの階段になっているのが分かると思います。

いきなり9月の頂上を目指すのではなく、手前に踏み台を置いて、一段ずつ上がっていく。6月で流れを確かめ、7月で呼吸を合わせ、9月で本番に挑む。一足飛びにしない。順番に積む。これが作戦ノートの背骨です。

見えない僕にとって、いきなり大きなものに飛び込むのは、とても不安です。でも、間に小さな段を置いてあげれば、不安は「次にやること」に変わる。階段は、遠い目標を、今日やる1ミリにまで分けてくれる道具なんです。

この階段の作り方を、僕は人生の中で、何度も使ってきました。視覚障害者になって、先が真っ暗に見えたときも、いきなり遠くを目指すのではなく、目の前の一段を上ることから始めた。25メートルも泳げなかった僕が、少しずつ距離を伸ばして、やがて長い距離を泳げるようになったのも、同じやり方です。大きすぎて足がすくむときは、段を細かく刻む。9月の本番という階段も、その昔から続く、僕の登り方の延長線上にあります。

🔑 大きな目標は、階段に分ける

9月の本番という大きな目標も、6月・7月という段に分ければ、「今日やること」が見えてきます。遠すぎて動けないときは、手前に踏み台を置く。一段ずつなら、必ず上がっていけます。


サブ11への挑戦は、これからも

今年の9月の大会も、僕にとっては、もっと先にある大きな夢へつながる一段です。その夢とは、IRONMANを11時間を切るタイム、サブ11で走り抜くこと。ギネス記録への挑戦です。

サブ11は、今の僕にとってまだ遠い目標です。でも、遠いからといって、あきらめる理由にはなりません。遠いということは、それだけ伸びしろがあるということでもあります。今年の作戦をていねいに積み上げて、来年の自分に、また一つ階段を渡していく。いつか必ず。その気持ちを、僕はずっと持ち続けています。

大きな夢は、一回のレースでかなうものではないかもしれない。でも、一段ずつ積み上げていけば、確実に近づいていける。9月の大きな大会は、その階段の、今年の大切な一段です。過去の自分より一歩先へ。それを、チームで、繋がる輪の中で目指していきます。

サブ11という大きな夢があるからこそ、今年の作戦ノートの一行一行に、力がこもります。もしゴールが近ければ、ここまで丁寧に積み上げる必要もない。遠い夢があるから、今日の練習も、明日の合宿も、すべてに意味が生まれる。遠い夢は、今日の一段を、特別な一段に変えてくれる。いつか必ず。その言葉を胸に、僕は今年も、一段ずつ上っていきます。


あなたにも「作戦ノート」を

ここまで、今年の僕の作戦ノートを開いてお見せしてきました。最後に、あなたへのお願いです。あなたにも、ぜひ「作戦ノート」を作ってほしいんです。

大きな目標があるなら、それをいきなり目指さなくていい。手前に、6月や7月にあたる「踏み台」を置いてみてください。本番の前に試す場、呼吸を合わせる場。大きな一つを、小さな段に分ける。それだけで、最初の一歩が踏み出しやすくなります。

遠い目標を前にして足がすくむのは、決して弱さではありません。ただ、目標が大きすぎて、最初の一歩が見えなくなっているだけ。段に分けてあげれば、「まず今日やること」がはっきり見えてきます。

そして、できれば一人で抱え込まないでください。僕がガイドの平川さんと作戦を立てるように、あなたにも、一緒に設計図を描いてくれる仲間がいるはずです。チームで立てた作戦は、迷ったときに支えになってくれます。

🔑 作戦ノートは、未来への地図

大きな目標は、頭の中だけにあると、ただの不安になります。でも、作戦ノートに「いつ・何を・誰と」と書き出した瞬間、それは歩いていける地図に変わる。夢は、段取りに分けた瞬間、計画になる。あなたの夢も、ぜひ一度、ノートに書き出してみてください。

気合いより段取り。ピンチはチャンス、カギは工夫。あなたの大きな目標も、作戦ノートに書き出して、一段ずつ積み上げていけば、きっと近づいていけます。9月、僕も僕の階段を上っています。あなたも、あなたの階段を、一緒に。今日も1ミリ、進みましょう。


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「視覚障害B2の生活」「IRONMAN サブ11挑戦」「1ミリの行動」「気合いより1ミリ」をテーマに、講演を続けています。学校・企業・自治体問わず、対応可能です。盲導犬シュクレも一緒に伺うことができます。

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最後まで読んでくれて、ありがとうございます

中澤の挑戦を、これからも見届けてもらえたら嬉しいです。日々の練習やレース、盲導犬シュクレとの暮らしを発信しています。

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RYU NAKAZAWA | 視覚障害B2 パラトライアスリート・プロ講演家
盲導犬シュクレと共に、1ミリの行動を続ける人