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📅 2026.08.07 | RYU NAKAZAWA
📖 物語・哲学

年50回登壇しても緊張はなくならない|準備型の僕の向き合い方

⏱ 約8分で読めます(4,906字)

9年、年間50回前後。これだけ人前で話してきても、会場に向かう日は胸のあたりがそわそわし、出番を待つ間は心臓が少し速くなります。それでもいい——僕はそう思っています。

もしあなたが、人前に立つたびに緊張して、「いつになったら慣れるんだろう」と思っているなら——。

もしあなたが、「緊張する自分は、まだまだだ」と、自分を責めているなら——。

もしあなたが、緊張とうまく付き合う方法を、本気で探しているなら——。

この記事は、あなたのためのものです。

こんにちは。視覚障害B2クラスのパラトライアスリート・中澤 隆(なかざわ りゅう)です。盲導犬シュクレと一緒に、IRONMAN(226km)のサブ11時間挑戦を続けながら、年間50回前後の講演を9年間続けています。

今日は、少し意外に思われるかもしれない話をします。これだけ登壇していても、僕の緊張は、なくなりません。でも、それでいいと思っています。即興が苦手な準備型の僕が、緊張とどう向き合っているか。その正直なところをお伝えします。

📖 この記事の目次
  1. 9年・年50回でも、緊張はなくならない
  2. 緊張するのは、本気で向き合っている証拠
  3. 緊張するから、台本を作り込む
  4. 完璧を目指さない。続けるための工夫として
  5. 緊張は「なくす」より「飼いならす」
  6. 弱さを、隠さずに話す
  7. 緊張と一緒に、9年歩いてきた

9年・年50回でも、緊張はなくならない

正直に告白します。僕は講演を9年続け、年間50回前後、人前で話してきました。それでも、本番前の緊張は、いまだになくなりません。会場に向かう日は、胸のあたりがそわそわします。出番を待つ間は、心臓が少し速くなります。

かつての僕は、「これだけやれば、いつか緊張しなくなるだろう」と思っていました。回数を重ねれば、平気になるはずだ、と。でも、何十回、何百回と登壇しても、緊張は消えませんでした。むしろ、「次こそ緊張をなくさなきゃ」と思うほど、よけいに体が固くなる気さえしました。そして、ある時から、その考え方を変えたのです。

緊張をなくすことを、目標にするのをやめました。代わりに、緊張したまま、ちゃんと話せる自分を目指すことにしたのです。緊張は、敵ではない。なくすものではなく、付き合っていくもの。そう考えるようになってから、僕はずいぶん楽になりました。

「緊張をなくす」を目標にしていた頃は、毎回が失敗でした。だって、どれだけ登壇しても緊張は消えないのですから、ゴールに永遠にたどり着けません。やってもやっても「まだダメだ」と思う。これは、本当に苦しい状態でした。でも、ゴールを「緊張しても話せる」に変えた瞬間、毎回が成功になりました。緊張しながらも、最後まで話しきれた。それで十分、合格なのです。目標を一つ変えるだけで、同じ事実が、失敗から成功に変わった。これは、僕にとって大きな発見でした。


緊張するのは、本気で向き合っている証拠

そもそも、なぜ緊張するのでしょうか。考えてみると、それはその時間を、本気で大切に思っているからです。どうでもいい場面では、人は緊張しません。緊張するのは、「ちゃんと届けたい」「失敗したくない」という気持ちがあるからです。目の前にいる人たちに、何かを持ち帰ってほしい。その願いが強いほど、緊張も強くなる。つまり緊張は、相手を大切に思う気持ちと、いつもセットなのです。

🔑 緊張は「どうでもよくない」という心のサイン

緊張は、目の前の人たちを大切に思っている証拠です。9年やっても緊張するのは、僕が今でも一回一回の講演を、本気で大切にしているから。緊張がなくなる日は、たぶん、僕がこの仕事を大切に思わなくなった日です。だから僕は、緊張を悪いものだと思わなくなりました。

もしあなたが、人前で緊張するなら、それはあなたがその場を本気で大切にしているからです。決して、あなたが未熟だからではありません。緊張する自分を責める必要は、まったくないのです。むしろ、その緊張は、あなたの真剣さの表れです。

僕は学生時代、運動も勉強も苦手で、自分にまったく自信がありませんでした。人前に出るのも、意見を言うのも、こわくてたまりませんでした。そんな僕が、今は年に50回も人前で話している。これは、緊張がなくなったからではありません。緊張は今もあるのに、それでも立てるようになったからです。緊張を、なくす必要はなかった。緊張したまま、前に進む方法を見つければよかった。昔の僕に、それを教えてあげたいくらいです。


緊張するから、台本を作り込む

では、緊張とどう付き合うのか。僕の答えは、はっきりしています。緊張するからこそ、台本を作り込む。これが、僕のいちばんの方法です。

僕は即興が苦手です。緊張すると、なおさら頭が回らなくなります。だから、その場の機転に頼る作り方は、僕には向いていません。代わりに、僕は前もって台本を徹底的に練り上げます。冒頭のお願いから、笑いの山場、静かに語る場面、最後の動画まで、流れをすべて作り込んでおくのです。

こうしておくと、本番で緊張しても、体が流れを覚えているので、ちゃんと話せます。緊張で頭が真っ白になりかけても、染み込ませた台本が、僕を次の言葉へ運んでくれる。緊張を、準備で飼いならすのです。気合いで緊張をねじ伏せるのではありません。段取りで、緊張しても大丈夫な状態を作っておくのです。

これは、トライアスロンのレースとも、よく似ています。レース前は、毎回ものすごく緊張します。でも、その緊張を「気合いだ!」と無理に高めようとすると、かえって空回りして、体が固くなる。だから僕は、レースでも段取りで備えます。どこで補給するか、どこで力を抜くか、決めておく。決めてあることが多いほど、緊張しても、体は動きます。講演もレースも、同じです。緊張する場面ほど、その場の気合いではなく、前もっての段取りが、自分を救ってくれるのです。

緊張をなくそうとするのではなく、緊張しても話せる準備をしておく。気合いより段取りが、いちばん本番に効く。

完璧を目指さない。続けるための工夫として

大事なことを、ひとつ付け加えます。僕は、完璧な講演を目指していません。台本を作り込むのは、完璧主義のためではないのです。

完璧を目指すと、苦しくなります。少しでも台本通りにいかないと、自分を責めてしまう。それでは、長く続けられません。僕が台本を作り込むのは、もっと違う理由からです。それは、緊張しても、安心して立てるようにするため。つまり、続けるための工夫なのです。

🔑 準備は「完璧のため」でなく「安心のため」

準備の目的を、「完璧に話すため」だと思うと、苦しくなります。でも、「緊張しても安心して立てるため」だと思うと、準備が味方になります。同じ準備でも、目的が違うと、心の重さがまるで変わる。僕は、安心のために準備します。だから、9年続けられているのだと思います。

多少、言葉が詰まってもいい。アドリブが効かなくてもいい。大事なのは、目の前の人に、伝えたいことがまっすぐ届くこと。完璧さより、伝わること。そのための準備なら、苦しくならずに、続けていけます。


緊張は「なくす」より「飼いならす」

「飼いならす」という言葉を、僕はよく使います。緊張は、野生の馬のようなものだと思っています。乱暴に押さえつけようとすれば、暴れます。でも、うまく付き合えば、自分を遠くまで運んでくれるにもなる。だから僕は、緊張をなくそうとはせず、飼いならそうとするのです。

具体的には、こうしています。緊張してきたら、まず「あ、今、緊張してるな」と、自分で認めます。緊張を否定せず、いったん受け止める。次に、「大丈夫、台本は体に入っている」と、準備してきた事実を思い出します。そして、出番が来たら、最初のひと言だけに集中します。全部をうまくやろうとせず、まず最初の一歩だけ。最初のお願いの言葉さえ口に出せば、あとは作り込んだ流れが、僕を運んでくれます。

🔑 緊張を「敵」から「相棒」に変える

緊張を敵だと思うと、戦わなければなりません。戦いは、消耗します。でも、緊張を「本気の証拠」「自分を運んでくれる力」だと思えば、相棒になります。同じ緊張でも、どう捉えるかで、その力の向きが変わる。僕は、緊張を相棒だと思うことにしました。だから、緊張する日も、こわくなくなったのです。

これは、トライアスロンのスタート前にも、毎回やっていることです。緊張を認めて、準備を思い出して、最初の一歩に集中する。レースも講演も、本番前の心の整え方は、まったく同じです。緊張を飼いならす技術は、一度身につければ、いろんな場面で使える。これも、ひとつの工夫なのだと思います。


弱さを、隠さずに話す

僕は講演で、自分の弱さを隠しません。むしろ、進んで話します。中学のとき、好きな子に告白できなかったこと。目が見えなくなっていく怖さ。夜が怖くて眠れなかった日々。かっこ悪い自分を、ちゃんと差し出すのです。

緊張についても同じです。「これだけやっても、僕はいまだに緊張するんですよ」と、正直に話すことがあります。すると、聞いている人がふっと笑って、肩の力を抜いてくれるのが、空気で分かります。弱さを開くと、相手との距離が縮まるのです。

ただし、ひとつだけ気をつけていることがあります。弱さは、過去の話と、そこから動いた行動として語る、ということです。「あの頃は怖かった。でも、こう動いた」と話す。今、目の前の挑戦に対して、不安や弱音をぶつけることはしません。過去の弱さは力になり、今への弱音は、応援してくれる人を不安にさせるからです。その線引きを、僕は大切にしています。

この線引きは、自分のためでもあり、応援してくれる人のためでもあります。僕には、ガイドや、コーチや、講演を聞いてくれる人や、家族がいます。みんな、僕の挑戦を信じて、支えてくれています。その人たちに向かって「もうダメかもしれない」と弱音を吐くことは、僕を信じてくれている人への裏切りになってしまう。だから、今の挑戦には、あきらめたりはしません。代わりに、過去にどう苦しみ、どう動いたかを正直に語る。それは弱さの開示であって、あきらめではない。この違いを大事にすることが、繋がる輪の中で挑み続けるための、僕なりの礼儀なのです。


緊張と一緒に、9年歩いてきた

振り返れば、僕は緊張と一緒に、9年間歩いてきました。緊張は、消えませんでした。でも、僕は緊張に振り回されなくなりました。それは、緊張をなくしたからではなく、緊張との付き合い方を、見つけたからです。

緊張する。だから、台本を作り込む。完璧を目指さず、安心のために準備する。弱さは隠さず、過去×行動で語る。これを繰り返してきたら、いつのまにか9年が経っていました。緊張を消そうと戦っていた頃より、ずっと自然体で立てるようになりました。

振り返ってみると、僕がやってきたことは、緊張を「気合い」で乗り越えることではありませんでした。むしろ、その逆です。緊張は受け入れて、その代わりに「段取り」で備える。台本という段取り、移動という段取り、心の整え方という段取り。ひとつひとつの段取りが、緊張する僕を、そっと支えてくれました。気合いで自分を奮い立たせるより、段取りで自分を安心させるほうが、ずっと長く続く。これが、9年間の僕の、いちばん確かな結論です。

もしあなたが、人前に立つたびに緊張して、自分を責めているなら、僕はこう伝えたいです。緊張は、なくさなくていい。緊張したまま、ちゃんとやれる準備をすればいい。それは、あなたがその場を大切にしている証拠なのですから。緊張する自分を責めるより、緊張する自分を、準備で支えてあげてください。それだけで、本番のあなたは、ずっと楽になります。

緊張は準備で飼いならす。なくすのではなく、付き合っていく。完璧でなくていい、続けることが、いちばん強い。

僕はこれからも、緊張を連れて、登壇します。会場のどこかから返ってくる拍手や声に支えられて、繋がる輪の中で、一回一回、言葉を届けていきます。あなたの緊張も、どうか責めないであげてください。それは、あなたの真剣さの、いちばんの証拠なのですから。緊張するあなたは、ちゃんと、その場を大切にしている。だから、大丈夫です。最後まで読んでくださって、ありがとうございました。


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「視覚障害B2の生活」「IRONMAN サブ11挑戦」「1ミリの行動」「気合いより1ミリ」をテーマに、講演を続けています。学校・企業・自治体問わず、対応可能です。盲導犬シュクレも一緒に伺うことができます。

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中澤の挑戦を、これからも見届けてもらえたら嬉しいです。日々の練習やレース、盲導犬シュクレとの暮らしを発信しています。

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