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📅 2026.07.20 | RYU NAKAZAWA
📖 物語・哲学

ガイドの後ろ側にいる家族へ|支えてくれる人の輪

⏱ 約8分で読めます(4,931字)

僕がゴールテープを切る一瞬の裏側に、ガイドを「いってらっしゃい」と送り出してくれた家族がいます。その、さらに後ろ側にいる人たちの話です。

もしあなたが、誰かを支える立場にいて、「その人の後ろにも、支えている人がいるんじゃないか」と想像したことがあるなら——。

もしあなたが、感謝を伝えるとき、「目の前の人だけでいいのかな」と、ふと立ち止まったことがあるなら——。

もしあなたが、「支え合いの輪」というものを、もっと深く考えてみたいと思っているなら——。

この記事は、あなたのためのものです。

こんにちは。視覚障害B2クラスのパラトライアスリート・中澤 隆(なかざわ りゅう)です。盲導犬シュクレと暮らしながら、IRONMAN(226km)のサブ11時間に挑み、年間50回前後の講演をしています。

今日は、僕の挑戦を支えてくれている人の、さらに後ろ側にいる人たちのことを書きます。僕にはガイドがいます。コーチもいます。でも、そのガイドやコーチを、僕のもとへ送り出してくれている家族や、周りの人たちがいます。僕が走れるのは、ガイド一人の力ではなく、その後ろの家族の理解があるから。今日は、その「後ろ側の輪」への感謝を、まっすぐにお伝えします。

📖 この記事の目次
  1. ガイド一人が走るために、何人の人が動いているだろう
  2. 「後ろ側の人を理解する」という、僕の大切な考え方
  3. 送り出してくれる家族がいて、初めて僕は走れる
  4. 支えてくれる人を、「すり減らさない」ために
  5. 感謝は、輪ごと向ける
  6. この考え方は、家庭にも、職場にも、あてはまる
  7. あなたの感謝も、もう一歩、奥まで届けてみませんか

ガイド一人が走るために、何人の人が動いているだろう

僕がIRONMANを走るとき、隣にはガイドがいます。スイムでは伴走ロープで繋がり、バイクではタンデム自転車に前後で乗り、ランでは1本のロープを握って横に並ぶ。ガイドは、僕の「目」になり、状況を声で伝え、ペースや安全を一緒に判断してくれる、対等なパートナーです。

でも、考えてみてください。そのガイドが、僕と一緒に練習する時間。遠征についてきてくれる時間。レース当日、朝早くから夜遅くまで僕と過ごす時間。その時間は、ガイド自身の生活の中から、切り出して、僕のために使ってくれている時間です。その裏では、ガイドの家族が、留守を守ってくれている。ガイドを「いってらっしゃい」と送り出してくれている。

週末に何時間も練習に付き合ってもらうとき、その人は、本当なら家族と過ごせたかもしれない休日を、僕に分けてくれています。遠征で何日も家を空けてもらうとき、その人の家族は、その不在を引き受けてくれています。僕がゴールテープを切る、その一瞬の裏側には、こうした見えない時間の積み重ねがある。表に出ることのない、たくさんの人の「譲ってくれた時間」があるんです。それを思うと、僕は、自分の挑戦を、決して一人のものだと思うことはできません。

🤝 一人を支えるために、輪が動く

ガイドが僕の隣に立つ。
そのために、ガイドの家族が後ろで支えている。

僕が走れるのは、ガイド一人の力じゃなく、その後ろの輪ぜんぶのおかげなんです。

ガイド一人が僕と走るために、その後ろで何人もの人が動いている。家族が、職場が、周りの人たちが。それに気づいたとき、僕は「ガイドに感謝する」だけでは足りないと思いました。僕の感謝は、ガイドを送り出してくれる、その後ろの輪ごとに向けるべきだと。一人の人の親切の裏には、いつも、その人を支える何人もの人がいる。そのことに思いを馳せられるかどうかで、感謝の景色は、ずいぶん変わってくるように思います。


「後ろ側の人を理解する」という、僕の大切な考え方

僕が人生で大切にしている考え方の一つに、「後ろ側の人を理解する」というものがあります。これは、目の前で僕を支えてくれる人だけでなく、その人を支えている人たちのことまで、ちゃんと想像して、感謝するという考え方です。

ガイド、コーチ、講演を呼んでくれる主催者、スポンサー。僕の挑戦には、たくさんの人が関わってくれています。その一人ひとりに、必ず「後ろ側」があります。家族がいて、仲間がいて、その人を支える世界がある。僕が一人の人を大切にするとき、その人の後ろにある世界まで含めて大切にしたい。そうすることで、後ろにいる人も「中澤さんを大切にしよう」と思ってくれる。感謝が、二重に、三重に巡っていくんです。

たとえば、ガイドの家族と、何かの折に言葉を交わす機会があったとします。そのとき、僕がガイド本人だけでなく、その家族にも心からの感謝を伝えられたら、家族の方も「この人のためなら、うちの人を気持ちよく送り出せる」と思ってくれるかもしれません。そうすると、ガイドはもっと安心して僕と走れるようになる。めぐりめぐって、僕の挑戦そのものが、もっと支えられたものになっていくんです。感謝は、自分のところで止めずに、その奥まで届ける。すると、その温かさは、必ず巡って戻ってきます。

人を、「個人」としてだけ見ない。
その人を支える輪ごととして見る。
それが、本当の感謝の向け方だと、僕は思います。

これは、きれいごとを言いたいのではありません。実際に、人は誰も、自分だけでは生きていません。誰かが僕を支えてくれているとき、その誰かもまた、別の誰かに支えられている。その繋がりの連なりに気づけたとき、世界はぐっと広く、温かく見えてきます。僕は、その連なりの中で生きていることを、いつも忘れないでいたいんです。


送り出してくれる家族がいて、初めて僕は走れる

レースの遠征に、ガイドがついてきてくれるとき。その前の夜、ガイドの家族は、どんな気持ちで送り出してくれているでしょうか。「気をつけてね」「中澤さんをよろしくね」。そんな言葉があったかもしれません。あるいは、何も言わずに、ただ快く送り出してくれたかもしれません。

どちらにしても、家族の理解がなければ、ガイドは僕と一緒に来ることはできません。家族が「いいよ、行ってきて」と言ってくれているから、僕は走れるんです。これは、本当にありがたいことです。僕のために、自分たちの大切な人を貸してくれている。その家族の懐の深さに、僕はいつも頭が下がります。自分の家族が、休日や遠征で長く家を空けることを、快く受け入れてくれる。それは、決して簡単なことではないはずです。その理解の一つひとつが、僕の挑戦を、目に見えないところで支えてくれています。だからこそ僕は、その理解に、きちんと応えられる自分でいたいと思うんです。

🔑 僕の226kmは、たくさんの人の理解でできている

僕が226kmを走り切るとき、
ゴールテープの向こうには、見えない人たちがいる。

ガイドを送り出してくれた家族。その理解が、僕の一歩を作っているんです。

だから僕は、ゴールしたとき、ガイドに「ありがとう」と伝えると同時に、心の中で、その家族にも手を合わせます。あなたの大切な人を貸してくれて、ありがとうございます。あなたの理解のおかげで、僕は今日、ここまで来られました、と。僕の挑戦は、僕一人のものでは決してない。たくさんの人の理解と支えの上に、成り立っています。


支えてくれる人を、「すり減らさない」ために

「後ろ側の人を理解する」ことには、もう一つ、大切な意味があると僕は思っています。それは、支えてくれる人を、すり減らさないということです。

誰かに支えてもらうとき、その支えを「当たり前」だと思ってしまうと、人はどんどん相手に甘えてしまいます。相手の都合を考えず、相手の生活を想像せず、ただ「やってもらって当然」という顔をしてしまう。でも、それを続けると、どんなに優しい人でも、いつか疲れてしまいます。支えるという行為は、相手の時間と気持ちを使うことだからです。

だから僕は、ガイドやコーチを、その後ろの家族ごと想像するようにしています。「この人は今、家族との時間を割いて、僕のために来てくれているんだな」「無理をさせていないだろうか」。そう想像できると、感謝の気持ちが自然に湧いてくるし、相手の負担にも気を配れるようになります。支えてもらうことに、慣れすぎない。これは、支え合いの輪を、長く健やかに保つための、大事な心がけだと思っています。

🌱 支えを、当たり前にしない

「やってもらって当然」になった瞬間、
支えてくれる人は、少しずつすり減っていく。

後ろ側まで想像できると、相手を大切にしながら、支えてもらえる


感謝は、輪ごと向ける

感謝の向け方には、二つあると思います。一つは、目の前の人に「ありがとう」と伝えること。これはもちろん大切です。でも、それだけでは足りない。もう一つは、その人の後ろにいる人たちにまで、感謝を向けることです。

僕は、ガイドやコーチや講演先の人たちを、「個人」としてだけでなく、「その後ろの輪ごと」で見るようにしています。一人の人を大切にすることは、その人の家族や、その人の世界まで大切にすること。そうすることで、繋がりは温まり、信頼は深まり、輪はもっと大きくなっていきます。感謝は、輪ごと向ける。これが、僕がたどり着いた、人との繋がり方です。

ありがとうは、目の前の人だけに、じゃない。
その人を支えるみんなに向けたい。
そうやって、繋がりの輪は広がっていく。

僕がこういう考え方を持てるようになったのは、自分自身が、たくさんの人に支えられてきたからです。見えなくなって、できないことが増えて、それでも前に進めたのは、僕の後ろにも、たくさんの理解があったから。だから今、僕も、僕を支えてくれる人の後ろにある世界を、ちゃんと見ていたいんです。受け取った優しさを、同じように、誰かに返していきたいから。


この考え方は、家庭にも、職場にも、あてはまる

「後ろ側の人を理解する」というのは、なにもアスリートとガイドのあいだだけの話ではありません。これは、家庭でも、職場でも、どんな人間関係にもあてはまる考え方だと、僕は思っています。

たとえば、職場で誰かが残業して、あなたの仕事を手伝ってくれたとします。そのとき、その人の後ろには、帰りを待っている家族がいるかもしれません。あるいは、取引先の担当者が無理を聞いてくれたとき、その人もまた、自分の上司や同僚との関係の中で動いてくれているのかもしれません。目の前の一人の行動の後ろには、いつも、見えない人たちの存在がある。それを想像できるかどうかで、感謝の深さは、まったく変わってきます。

🔑 後ろ側を想像する力は、優しさの力

目の前の人の後ろにいる、見えない誰か。
それを想像できる人は、自然と、優しくなれる。

これは特別な才能じゃない。少し立ち止まって、想像してみるだけです。

僕がガイドの家族に感謝するのも、妻を支えてくれる人たちに感謝するのも、根っこは同じです。一人の人を大切にするとき、その人を取り巻く世界まで、ちゃんと見る。この想像力は、誰にでも持てるものです。そして、この想像力こそが、人と人の繋がりを、温かく、強くしてくれるのだと、僕は信じています。家庭でも、職場でも、あなたの周りの「後ろ側」に、少しだけ目を向けてみてください。きっと、見える景色が変わります。


あなたの感謝も、もう一歩、奥まで届けてみませんか

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。最後に、あなたに伝えたいことがあります。

あなたを支えてくれている人がいるなら、その人にも、きっと「後ろ側」があります。家族がいて、仲間がいて、その人を送り出してくれる世界がある。あなたが受け取っている支えは、実は、たくさんの人の理解の上に成り立っているのかもしれません。

もし、誰かに支えられていることに気づいたら、感謝を、もう一歩奥まで届けてみてください。目の前の人だけでなく、その人を支えている人たちにまで。「あなたの大切な人に、いつも助けてもらっています」。そんな気持ちを持つだけで、繋がりはもっと温かくなります。感謝は、輪ごと向ける。そうやって、支え合いの輪は、どこまでも広がっていきます。

僕はこれからも、ガイドやコーチ、そしてその後ろにいるすべての人たちへの感謝を忘れずに、繋がりの輪の中で、226kmに挑み続けます。ピンチはチャンス、そのカギは工夫と、人との繋がり。一緒に、人生を現役で生きていきましょう。今日も、最後まで読んでくれて、本当にありがとう。


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「視覚障害B2の生活」「IRONMAN サブ11挑戦」「1ミリの行動」「気合いより1ミリ」をテーマに、講演を続けています。学校・企業・自治体問わず、対応可能です。盲導犬シュクレも一緒に伺うことができます。

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最後まで読んでくれて、ありがとうございます

中澤の挑戦を、これからも見届けてもらえたら嬉しいです。日々の練習やレース、盲導犬シュクレとの暮らしを発信しています。

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RYU NAKAZAWA | 視覚障害B2 パラトライアスリート・プロ講演家
盲導犬シュクレと共に、1ミリの行動を続ける人